「身土不二」の読み方とルーツ
身土不二は「しんどふじ」または「しんどふに」と読みます。
仏教用語では「しんどふに」と読み、食分野で使われる場合は「しんどふじ」と濁ります。
身土不二の意味は、「身と土、二つにあらず」、つまり人間の体と人間が暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあるという言葉です。
言葉の起原は大昔の仏典に遡ることができますが、現在では食の思想として「その土地のものを食べ、生活するのがよい」という意味で使われています。
食の思想としてのルーツは明治時代に遡ることができますが、近年「地産地消」や「スローフード」といった言葉とともに関心が高まっています。
東京都立中央図書館のデータベースによれば、「『体と土とは一つである』とし、人間が足で歩ける身近なところ(三里四方、四里四方)で育ったものを食べ、生活するのがよいとする考え方」とあります。
身土不二と地産地消の違いは?
「地産地消」は、地域生産・地域消費の略で1981年ごろに生まれたといわれており、歴史は意外に浅いです。
地域でつくられた農産物や水産物を、地域で消費しようという意味で、旬の食材か、またはその土地ゆかりの伝統野菜や地域の特産、伝統食であるか、または作り方については特段に求められていなかった。
旬や伝統に関して頓着しなかった1980年代当初の「地産地消」は、伝統食や旬を重んじる「身土不二」との考え方は、相いれない部分も多かった。
しかし、1990年代以降になると事情が変わっていった。海外からの安価な食材の流入するようになり、多くの消費者が食の安全性に対する意識に目覚めたためだ。
国産、地元の食材は安心安全だという見方が広がり、地域で生産される食材や、伝統的な食への注目度も増した。地産される安全な食材と、身土不二の考え方が近づいていったのだ。
時代ごとに姿かたちを少し変えながら、再び脚光を浴びている「身土不二」という思想。
わが身と土地は切り離せないとする直感的で根幹的な思いは、現代のサステナブルな考え方や行動に結びつくのではないでしょうか。
注目を浴びている「道の駅」や「朝市」
最近注目を浴びている「道の駅」や朝市などのファーマーズマーケットは
・化学肥料を使わないオーガニック野菜は、安心で安全なものが多い。
・その土地にあった食材を育てるため、地域の伝統野菜や伝統的な農法を守ることにつながる。
・有機栽培は土壌を必要以上に傷つける心配が少なく、環境への負荷を減らせる。
・生産者自身が販売するため、近距離から持ち込まれており、輸送に伴う排出ガスを押さえることができる。
・手間ひまかけて育てる、意欲的な生産者を直接的に支援できる。
・通常の流通では規格外などではじかれてしまう商品も並べられるため、フードロス(食品ロス)の削減につながる。
これらの考え方、行動は、伝統や旬を重んじる身土不二と親和性が高いことがわかる。
古くて新しい行動習慣
國學院大學経済学部教授の古沢広祐氏は、身土不二のルーツは仏教にあると前置きしつつ、『生態系の循環の中で人が生きている様子を感覚的にとらえた言葉です。いまこの言葉が、「エコロジカル・ダイエット」(エコ・ダイエットと略)という考え方として再生しています。』と述べている。
戦中戦後の食糧難を経て飽食の時代と言われて久しい。しかし、環境のために食材のムダをダイエットすることは、「もったいない」という感覚を備える私たち日本人には決して難しくないはずだ。
作り手は届けられる範囲に必要な量を、その土地に合ったやさしい農法でつくり、消費者は丁寧につくられた食材をむだなくいただく。これは、とてもサステナブルで、機能的でもある。
自分や自分の大切な人の体や心にとって安心安全で、環境の負荷を減らせる行動基盤にもなる、「身土不二」という古くて新しい思想を日常に取り入れてみてはいかがだろうか。
情報は以下のサイトを参考にしました。詳細はそちらを参照してください。”ELEMINIST”
https://eleminist.com/article/1067